かつては福⼭市のベッドタウンであった神辺町に建てる平屋のモデルハウスである。
平屋の良さは何と⾔っても庭と直接繋がることであるが、敷地周辺は市街化が進んでいたこともあり、素朴にそれを実践すると住宅に必要なプライバシーが確保し難くなるといった状況であった。
そこで外部の空隙を活かした平家として計画を進めるのでは無く、まるでそこにもともとあった岩の様な塊を配し、いったんは外界とは縁を切った上で、その内部に空隙をつくり、そこに内部空間を繋げるという⽅法を試みた。
地表に存在していたエレメントを抽出し、注意深く観察しながら領域を獲得して⾏くような空間取得⽅法の模索なのである。
主たる空隙は⽇照を考慮し南側に設けることとした。そして、リヴィングや主寝室はそれとつなげることで明るさや静寂さを担保させた。またその他の室も様々な空隙と繋げることで多様な場所と⾵景を横断し、空隙と暮らしが共に成⻑するといった設を⽬指した。
空隙は庭或いはテラスとなり内部空間と絡まり合うことで、ここでの⽣活に様々な変化を与え、⾵景の差異をシークエンスとして統合し、体験化することになるであろう。
建築が⼈間と⾃然の関係を固定する事なく媒介し、移ろい続ける⾃然の影響を受けながら、絶えず変化するといった創造的な暮らしこそがこれからの家に必要なことだと信じている。